オオカミ弁護士の餌食になりました
そこまで言ってから、少し声の調子を落とす。
「でも姑息だったよな。恋人ごっこなんて言い出さないで、最初から交際を申し込んでいればよかったのに……やっぱり、真正面からぶつかって拒絶されるのは怖かったんだ」
それに、と言って、香坂さんはカウンターに置かれた私の手に指を重ねる。
「拒絶反応がなおったら、君がほかの男にも触られる可能性が出てくるってことを、まるで考えていなかった」
手の甲を優しくなぞる長い指は、壊れ物でも扱うみたいに丁寧だ。
拒絶反応を起こさせない稀有な手を見つめながら、私はぽつりとつぶやく。
「てっきり、香坂さんは義務感で私に付き合ってるんだと思ってました」
私の言葉に、彼は驚いたように目を広げた。
「まさか。義務感だけで、好きでもない子にここまでしないだろ」