オオカミ弁護士の餌食になりました
エントランスドアを抜けてアプローチに出たところで、私はベンチに腰掛けている大きな人影に気付いた。
同時に向こうもこちらに気付き、勢いよく立ち上がった、と思ったら、そのままの勢いで突進してくる。
「まりいいいん!」
いつものように肘で受け止めようとしたら、思いがけず、香坂さんが私を隠すように前に出た。
「やあ、海斗」
「おお、千暁! ふたりとも一緒か」
スーツを着込んだ兄は、私と彼を交互に見て、うんうんと満足したようにうなずいている。
「俺はうれしいよ。お前たちがくっついてくれるなんて」
香坂さんから報告を受けたのか、兄は矢も楯もたまらずといった様子で仕事の空き時間を見つけてわざわざここまでやってきたらしい。