オオカミ弁護士の餌食になりました
香坂さんの肩をばしばし叩くと、私の頭をなでまわして頬ずりをしてこようとする。
とっさにカバンでブロックすると、香坂さんがさりげなく私の腕を引っ張って兄から離した。
「これで海斗も心置きなく結婚できるな。で、相手はどういう女性なんだ?」
彼の言葉に、兄ははっきりした二重瞼の目をぱちくりさせる。
「相手の女性? いないよそんなの。結婚はそういう相手ができればするだろうけど、今は別に考えてない」
「は? 誰か決まった人がいるわけじゃなかったのか」
香坂さんが目を丸めるのと同時に、私も呆気に取られる。
てっきり兄には彼女がいて、でも私のトラウマを克服するまでは結婚するつもりはない、ということだと思っていた。