オオカミ弁護士の餌食になりました

 まじまじと見つめる私の視線を受け止めて、兄は不敵に微笑む。

「俺には真凛がいるし。千暁が彼氏なら、これからも心置きなく真凛一筋で生きていける!」

 両手を広げて抱きついてこようとする兄の顔を、香坂さんが右手で押し返した。

「ぐお、なにするんだよ、千暁」

 はあっと大きなため息をついて、香坂さんはつぶやく。

「今度は海斗のシスコンを治さないといけないな」

 どうにかして私に触れようとする兄を何度も押しのけている香坂さんを見て、もしかして、と思う。

 まさか、兄にまでヤキモチを焼いてるわけじゃないよね……?

 突然振り返ると、香坂さんは私の肩を抱いてさっさとアプローチを歩き出した。彼の勢いにつられるようにして、私も戸惑いつつ足を踏み出す。

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