オオカミ弁護士の餌食になりました

「あ、おい。どこへ行く!」

 兄はすかさず後を追ってきた。そんな彼に、香坂さんは言う。

「帰るんだよ。俺の貴重なご褒美タイムをこれ以上減らされたら困る」

「なんだとう! 千暁、まさかお前、真凛にいかがわしいことを……!」

「するだろ! 付き合ってるんだから当然だろ! むしろ俺は毎日したいんだ! だから邪魔するな!」

「ふ、ふざけるな! 真凛は俺のだぞ!」

「ちがう、俺のものだ!」

 立ち止まって言い争いをはじめた、いい大人ふたりをぽかんと見上げる。

 およそ弁護士と司法書士とは思えないほど子どもじみた言い合いに、しばらく絶句してから、こらえきれずに私は噴き出してしまった。

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