オオカミ弁護士の餌食になりました
「だって、香坂さんは家族枠みたいなものだから。兄の友人で昔から知っているし」
「家族枠……ね」
目を細めてつぶやいてから、彼はゆっくり私の手を取った。
「このあと、時間ある?」
「え? はい、まあ」
「ちょっと飲んでいかないか? 話したいことがあるんだ」
そこまで言った香坂さんの目が突然背後に注がれて、私は振り返った。
遠くに見えた光景に、彼の存在を忘れてくぎ付けになる。
レインボータワーの透明なエントランスドアの向こうに、見覚えのある人物がふたり。
わが社で男前トップスリーに入る営業統括部長の冴島部長が、女の子の腰を引き寄せてこめかみにキスをしている。
その相手の顔を見て、唖然としてしまった。