オオカミ弁護士の餌食になりました

 あんなふうに優しく触れられたら、私でも怖いと思うことなく誰かと恋愛をすることができるのだろうか。

 想像しようとして、無理だ、とすぐに思った。

 私はスキンシップ自体ができない。

 女の腕を乱暴につかんだり、引っ張ったりする男ばかりではないことはわかっている。

 世の中には優しい男性も、穏やかな男性もたくさんいる。私のトラウマを刺激しないような男性となら、深い関係になることもできるかもしれない。

 けれど実際に、私はこれまで異性と深い関係になれたことがなかった。

 それもこれも、全部兄のせいだ。

「ここだよ」

 香坂さんは裏通りに面したビルに入ると、私をエスコートするように階段を下りていった。

 彼に続いておしゃれで高級感のあるエントランスをくぐった途端、呆気に取られる。

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