オオカミ弁護士の餌食になりました

 都内にある中規模の総合法律事務所に勤務している彼は、民事事件から企業法務まで、幅広い案件を手がけていて恐ろしく忙しいはずだ。

 そんな人に、私ごときのごくごくプライベートな悩みに付き合ってもらうなんて、時間の無駄以外のなにものでもない。

「俺は一向にかまわないけどな。きれいな子といちゃつけるなんて、得以外のなんでもないし」

「い、いちゃつくって……」

 自分には縁のなかったワードに過敏に反応してしまう。すると、香坂さんは「そうだ」と思いついたように言った。

「借りをつくるのが嫌なら、交換条件として、俺の頼みをきくっていうのはどう?」

「頼み?」

 香坂さんはグラスを揺らしながら、少し困った顔で笑った。


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