オオカミ弁護士の餌食になりました

「契約成立だ。よろしくね、真凛」

 いきなり呼び捨てされて、心臓が跳ねる。

「……はい」

 恋人ごっこといっても、香坂さんは忙しい人だからそんなに頻繁に会うわけじゃないだろうと思った。

 きっと月に一度か二度くらい、こうやって飲んだり食事をしたりして、少しずつ触られることに慣れていく。

 ゆっくりでも前に進むことには変わりないし、それくらいのペースのほうが、私のほうも落ち着いて彼と接することができそうだ。

「不束ものですが、よろしくお願いします」

 あらためてぺこりと頭を下げると、香坂さんは小さく笑って「よろしく」と私に手を差し出した。





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