オオカミ弁護士の餌食になりました

 眞木が勤務している広告プロダクションは、偶然にもそのとなりのビルに入っている。

 彼女とは高校を卒業してから音信不通だったけれど、三年前に会社のそばのレストランでばったり顔を合わせて以来、ときどきランチをしたり飲みに行ったりする仲に戻っている。

『合コンの会場は会社のそばにしますから! だから来てお願い先輩!』と懇願していた眞木の必死な顔がよみがえって、やっぱり悪いことしたなと思いながら国道沿いを歩きだす。

 ふいに強い風が吹き抜けて、トレンチコートの襟を掻き合わせた。

 三月に入ったけれど、日が落ちた後の空気はやっぱり冷たい。

 どこかで鍋でも食べていこうかな。

 そう考えて、おひとりさまがすっかり板についている自分に苦笑してしまう。

 さっきの男たちはきっと想像もしないだろう。いや、彼らだけじゃない。後輩の眞木も、同僚の和花ですら、私の秘密を知らない。

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