オオカミ弁護士の餌食になりました

「帰るんですか?」

 突然声がして振り返ると、さきほどまでテーブルで向き合っていた商社マンのひとりが立っていた。

 微かに口角を上げた自信たっぷりの表情から、己のルックスやステイタスを誇っている気配がありありとうかがえる。

「つれないなあ。何も言わずに帰ろうとするなんて」

「すみません。用事が入ってしまって」

 そっけなく言葉を返したにもかかわらず、彼はニッと笑みを深くした。

「わかりますよ。有村さん、本当はああいう場が苦手なんでしょ? 僕も同じです」

 自信たっぷりの言葉に苦笑してしまう。

 典型的な“自分勝手な男”だ。

 人の話を聞かないうえに、勝手に作り上げた私の人物像に共感する素振りをして、女はみんな自分が声をかければ落ちると思っている。

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