オオカミ弁護士の餌食になりました
「……真凛?」
「なんでもないです」
なぜだかひどく悲しかった。
うつむいて顔を隠す。そうしないと感情を読まれてしまう気がした。
彼の心に透けて見えてしまった義務感が、とても寂しくて、私は思い知る。
香坂さんとの触れ合いは、恋人ごっこだった。
そんなの、わかっていたはずだった。だって最初から、彼は言っていた。
『俺と荒療治、試してみない?』
それは本物の恋人関係ではなく、フリだということだ。
それなのに、私はいつのまにか、香坂さんのことを好きになっていた。
彼に触れられるたびに、優しく見つめられるたびに、男性に対して閉じていた心が、どんどん開いていった。