オオカミ弁護士の餌食になりました

 まあ、男は自信がないよりはあったほうがいいのかもしれないけれど……。

「そうですか。それはよかったです。それじゃ」

 勝手にひとりで浸っていてくれ、と心の中で付け加えて踵を返すと、足音が追いかけてきた。

「待ってください。ふたりで飲みなおしませんか。静かな場所で」

「いえ、遠慮します。おひとりでどうぞ」

「ははは、おもしろいひとだなあ」

 話しかけられても一向に足を止めない私に、しばらく並走するようについてきた彼も、やがて焦れたように私の手首を掴んだ。

「と、とまれって! 話、聞いてます!?」

 引っ張られると同時に、体がこわばった。

 胃がひゅっと体の奥に引っ込んだような感覚に寒気を覚える。掴まれた場所がぷつぷつと粟立ち、波のように全身に広がっていった。

 体に表れた明確な拒絶反応に、冷や汗まで出てくる。


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