オオカミ弁護士の餌食になりました

 寝息を立てている端正な顔を見下ろして、恥ずかしいようなうれしいような気持ちになったことを覚えている。

 私も香坂さんもしっかり服を着ていて、なにもなかったことは明白だけれど、好きな人のとなりで朝をむかえる気持ちを体験できたことはとても貴重だった。

 おかげで、何かが吹っ切れたような気もする。

 漂いはじめたコーヒーの香ばしい匂いが一日のはじまりを告げ、気持ちが引き締まっていく。

 今日もきっと、忙しくなる。

 ぞくぞくと出社してくる同僚たちに挨拶を返しながら、私は自分のデスクに戻った。




< 87 / 157 >

この作品をシェア

pagetop