オオカミ弁護士の餌食になりました

「は、なして」

「は?」

「放して!」

 勢いよく振り払った途端、商社マンの顔に不快感があらわになった。眉間にシワを寄せ、舌打ちをこぼす。

「なんだよその態度。人を汚いもんみたいに扱いやがって」

 プライドを傷つけられたのか、急に口調が荒くなった。

 掴まれた感触が残る手首をさすりながら、私は男に追い詰められるようにじりじり後退する。

 普段だったら男に凄まれても怖くないけれど、今はダメだ。全身に広がった鳥肌が、ちっともおさまらない。

「ちょっと美人だからって、調子に乗ってんじゃねえぞ!」

 ふたたび腕を掴まれそうになったときだ。

「真凛」


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