結婚のその先に
「取締役っ!」
談笑していた近くの社員が緊張して正座になる。

「お世話になったね。私の婚約者が。」
そう言って栞菜の荷物を持ち栞菜に上着を着せる啓吾に近くの社員の酔いが一気にさめる。


「啓吾さん。もう帰るんですか?」
「帰ろう。ほら、立てるか?」


女子社員たちは啓吾のやわらかい声のかけ方や栞菜の支え方にうっとりとため息が漏れそうだった。

そのくらい啓吾が栞菜を大切にしているのが伝わってくる。愛しくてたまらないのが見てとれる。


翠だけはぐっと唇を噛み締めてそのようすを見ていた。
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