結婚のその先に
そしてチャペルの入り口。
「今日はよろしくお願いします。」
栞菜の父が待っていた。

父は栞菜に手を伸ばす。何年ぶりかに父に触れる。それだけで栞菜は想いが溢れそうだった。

父の腕に自分の腕をからめて栞菜は父を見た。

「お父さん。」
「やめろ。挨拶はしなくていい。」
「でも…」
「高宮のためにお前の人生をもらったのは私だ。」
栞菜の父はまっすぐ前を見たまま話す。
「何千、何万もの人が関わっている。高宮を無くすわけにはいかない。」
「はい。」
「良輔もこう望んでいるはずだ。」
「…はい。」
父もまた兄の死から立ち直れていない。
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