結婚のその先に
「私ね…」
「うん」
「赤ちゃんができたかもしれないって思った時にこの子にだめって言ったの。いたらだめだって。」
栞菜は啓吾の手の上から自分の手をお腹にあてる。

「これ以上啓吾さんが私のそばにいなきゃならないっていう責任を増やせないって思った。」
啓吾は栞菜の手の上からお腹に触れる。栞菜の指に自分の指をからめた。

「でもね」
栞菜の声が震える。

「本当はすごく嬉しかった。啓吾さんと私を赤ちゃんが繋いでくれてるんだって思ったら…嬉しかった。」
「うん」
「でもだめって思っちゃったこと、すごく後悔してる。だめなママだって思う。だから赤ちゃん、あの時…。」
栞菜が良輔のお墓で倒れていたことを啓吾は思い出していた。今でも思い出すと心が震える。
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