結婚のその先に
真っ赤な口紅の翠はまっすぐに栞菜を見ている。

自信に満ちていてすこし微笑んですらいる。

栞菜はそんな翠に愛想笑いを返す。


「私、啓吾さんとお付き合いしていたんですよ。」

「……。」

そう言われて動揺しないわけがない。


「ニューヨークではほとんどの時間を彼と過ごしていたんです。」

「…そうですか。」

それを自分に言ってどうしたいのかがその時栞菜にはわからなかった。
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