SKETCH BOOK
新しい家族
☆
高校の入学式で、
あたしは運命を感じた。
隣の席に座る男の子の横顔に、
心を奪われた。
つり眉たれ目のその人は、
必死に机にかじりついていた。
「梓!クラスどう?慣れそう?」
隣のクラスから顔を出したのは
中学からの親友、塚本百合。
百合はあたしのクラスに顔を覗かせると、
ちらっと隣を見て囁いた。
「ねえ、隣の子、結構
かっこいいんじゃない?」
「え、そうかな?」
「アンタ、彼氏欲しいって
言っていたわよね?チャンスじゃない?」
「ちょっと、茶化さないでよ。
あたしは本気なんだから!」
「だから、チャンスじゃないの。
アタックしてみたら?」
百合のやつ……。
彼氏いるからっていつも余裕なんだから。
百合は中学の頃から付き合っている彼氏がいる。
同じ高校に入学して、同じクラスで……。
いいなぁ、百合は。
華の高校生活のスタートじゃない。
あたしなんか誰も知らないこの教室で
うまくやっていけるかどうか分からないっていうのに……。
「まあ、後でまた寄るからさ。
今日は一緒に帰ろう?」
「うん、分かった」
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