SKETCH BOOK
本当の気持ち
✻
「日が暮れてきたな」
「そうだね」
「帰るか」
「うん」
さっきまでのぎこちなさは、もうない。
いつの間にか手を繋ぐことにも
違和感は感じなくなっていて、
さっきからずっと、二人で
握り返し合っては笑っている。
浩平は他愛のない話をして
あたしを楽しませてくれていた。
あたしもその話を聞いたり、
たまには自分のことを話したり。
行きとはまた別のドキドキ感が訪れていた。
「梓とはいろんなところに行きたいなぁ。
バイクの免許でもとってさ、
それで梓後ろに乗せたりして」
「バイクかぁ。かっこいいね」
「だろ?そのうち取れるように頑張るよ」
「うん」
いつの間にかもう家の前まで来ていて、
名残惜しそうに浩平が手を離した。
今まで繋がれていた間の
温もりが解けてふわふわする。
もっと一緒にいたいと思った。
「ごめんな。せっかく
お洒落してきてくれたのに
散歩みたいな感じになって」
「ううん。楽しかった。また行こうね」
「おう。じゃ、また学校で」
「うん」