SKETCH BOOK
「なんだよ」
「ううん。なんでもない」
「デート、楽しかったか?」
「え?ああ、うん。楽しかった」
橙輝にそう聞かれて、
さっきまでの楽しかった時間が思い出される。
浩平の温かい手の温もりを思い出すと頬が熱くなる。
頬を押さえて返事を返すと、
橙輝はへぇ、と声をあげた。
「松田、嬉しそうに帰っていった」
「そう?それならいいんだけど」
「お前ら、お似合いだよ。本当に」
「そう……」
お似合い、かぁ。
嬉しいような嬉しくないような。
だけどこれは前向きに受け取っておこう。
「そ、そういえば橙輝!
あんたサックス吹けるんだって?」
「お前、なんでそれを」
「浩平に聞いたの!」
「浩平、か。そりゃそうだな」
「うん?どうしたの?」
「いいや。吹けるけどあんまり吹きたくない」
「なんで?」
「恥ずかしいだろ」