SKETCH BOOK






一学期も終えて夏休みがやってきた。


あたしはというと補習の嵐。


毎日学校に行っては
先生と一緒にプリントとにらめっこ。


橙輝には散々笑われたけれど
浩平は親身になってくれて励ましてくれた。


学校が終われば浩平の家で勉強。


苦しかったけれど
なんとなく落ち着いて楽しく勉強出来た。


そんな毎日を繰り返していた時。


「お祭り?」


「そう。クラスのやつらが集まって、
 みんなで祭りに行こうって話してるんだけど、
 梓も来るよな?」



お祭りか。


楽しそうだけれどあたしは無理。


だってクラスで浮いてるし。


行ったってきっと楽しくない。


きっと水差しちゃうよね。



「あたしは無理かな。友達いないし」


「俺がいるだろ。あ、あと鳴海も」


「橙輝も?」


「そう。なんかネタ集めに参加するってさ」



ネタ集め。


相変わらず絵を描くことに夢中なんだから。


お祭りに行ってもスケッチブックを持って
手を真っ黒くしている姿が目に浮かぶ。


ふふっと笑ってあたしは頷いた。


「行く。行きたい」


「そう?良かった。今夜迎えに行くから
 三人で行こう。浴衣、着て来いよ?」


「ゆ、浴衣?」


「女子はみんな浴衣着てくるんだぞ。約束な」


「う、うん」


浩平はあたしの手を握ってくれた。


温かい。


夏の暑さは苦手だけれど、
浩平とこうして手を繋いだり


抱きしめられたりするのは好き。


その時だけはあたし、
女の子なんだって自覚するの。


変な話だけど。



「じゃあ、また夜にな」


「うん。送ってくれてありがとう」


「うん」




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