SKETCH BOOK



「鳴海のこと、橙輝って呼ぶかな。
 同じ鳴海になるし、
 なんかちょっと変な感じになるよな」


「そんなことないよ。
 あたしのことは名前で呼んでくれるんだし、
 変わらないよ」


「そっか」


「うん」




大きく頷いてベンチから立ち上がると、
浩平も立ち上がってあたしを見た。


あれ?


ちょっと背が大きくなった?


男の子って不思議。


思いもよらないスピードで成長していく。


そう言えば橙輝の背中も大きかった。


橙輝、今何してるんだろ……。


「聞いてる?」


「えっ?あ、ごめん。なんだっけ?」


「もう。梓はぼうっとすることが多いんだな」


「ごめんね」


いけない。


集中しなきゃ。


ぼうっとするとつい橙輝のことを考えてしまう。


もう本当にどうにかしないと。












浩平はその後も旅行の話をしてくれて、
とても楽しかった。


どこにも行かない。


公園にいるだけなのにこれだけ楽しい。


何も心配いらないじゃない。


上手くやれる。


大丈夫。


そう思っていた。





もうすぐ九月。


新しい何かがやってくる。


夏はもう終わりを迎えていた。





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