SKETCH BOOK
また、後ろから橙輝の手が伸びる。
今度は頑張って立ち、
釣竿をしっかりと持つ。
しばらくそうして待っていると、
ピクンと釣竿に重さがかかった。
「あっ、来た?」
「おう。ゆっくり引くんだ。
こうして……このまましっかり持てよ」
「うわっ、グイグイ来る!」
「よし、思い切り引け!」
橙輝の合図に釣竿を引き上げると、
小さな魚が釣れた。
「わあい!釣れた釣れた!」
素直にあたしが喜ぶと、橙輝はふっと笑った。
「な?釣り、楽しいだろ?」
ニヤニヤする橙輝を見て、失敗したと思った。
これじゃあ、パパや橙輝の思うつぼじゃない。
まさかこんなにも喜ぶとは、不覚。
「べ、別に楽しくない。釣れたから良かっただけ」
「素直じゃないなあ。認めろよ。
楽しかったんだろ?」
面白いおもちゃを見つけた
子どものような笑みを浮かべて、
橙輝はあたしに詰め寄った。
とんでもない悪魔に目をつけられたものだ。
橙輝から逃れて、あたしは
パパのところへ行った。
パパは橙輝と同じように川を眺めていた。