SKETCH BOOK
「お金は置いていくから心配しないで。ね?」
お金とかはどうでもいい。
一番重要なのは、
橙輝と二人きりってこと。
自分の気持ちに気付いたばかりなのに、
橙輝と二人きりで生活するなんて、考えられない。
「俺がいたら嫌なのかよ」
隣から不機嫌そうな声が聞こえた。
橙輝を見上げると、橙輝は
むすっとした顔であたしを見ていた。
思わず目を逸らしてしまう。
パパがあたしの前にやってきて、頭を撫でた。
「ごめんな。お土産、いっぱい買ってくるよ」
「……うん」
パパにそう言われるともう
反撃のしようがない。
あたしは静かに頷いた。
「じゃ、明日早速出かけるから」
「明日ぁ?」
「マジかよ……」
あたしと橙輝は同じように言葉を落とした。
二人で顔を見合わせる。
するとお母さんはニコニコ笑った。