SKETCH BOOK
「決まりね!さあ、荷造りするわよ~!」
「お母さん、荷造りって
もしかしてあれのこと?」
テレビの前に広げられた
キャリーケースを指さすと、
お母さんは照れながら口を開いた・
「あ、バレた?」
「バレた?じゃないよ。まったく……」
我が母親ながら本当におてんばだ。
もう大の大人だっていうのに、
母親だっていうのに、
お母さんは無邪気というか、
子どもっぽいところがある。
たまにどっちがお母さんなのか
分からなくなるくらいに。
お母さんはキャリーケースの前にしゃがみ込むと、
荷造りを再開した。
「はぁ。ハワイかぁ……」
「まあ、ハワイなんていつでも行けるさ」
橙輝はのんびりとそう言った。
「いつでも?」
「おう。高校卒業したらな」
「えー。なんで高校卒業したら?」
「今は学業が一番だろ」
「大学もあるじゃん」
「お前……その頭で大学行こうとしてんのか?」