SKETCH BOOK



真剣な顔でそう言われた。


失礼な。


あたしだって行こうと思えば行けるもん。


目だけでそう訴えると、
パパがそうしたように、


橙輝はあたしの頭に手を置いた。


「お前が奇跡的に大学に受かったら、
 俺がハワイに連れて行ってやるよ」


「え、橙輝が?」


「なんだよ。悪いかよ」


「う、ううん」


思わず声をあげると、すごい顔で睨まれた。


「ハワイの約束、本当なの?」


「えっ?」


「ハワイに連れて行ってくれるって」


「あ……ああ。そうだな」


「絶対?」


「絶対」


「約束だよ?」


「うん。約束」


指きりげんまんをするほどの距離ではないから、
目と目を合わせる。


次第に恥ずかしくなって
思わず目を逸らした。


大学ねえ。


そろそろ本気で考えようかな。


本当にハワイに連れて行ってもらえるのかな?


その時は二人なのかな?


パパたちもってことかな?


まぁ今はハワイのことよりも先に
大きな壁にぶち当たっていることを思い出した。




そうよ。


まずは明日からのこの一週間、
どうやって乗り切るか。


それだけを考えよう。


橙輝との二人きり生活が、
明日から始まろうとしていた。





< 67 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop