SKETCH BOOK
*
目覚ましの音で目が覚めた。
大きく伸びをして、カーテンを開ける。
日の光が差し込んできて気持ちいい。
部屋着のままトントンとリビングへ向かう。
「お母さん、お腹すいたー」
扉を開けてそう呼ぶと、返事はなかった。
トイレにも寝室にもいない。
それどころかパパもいない。
会社に着ていくスーツは
クローゼットに全て揃ってある。
どうして?
一体どこに……。
「あっ」
思い出した。
ハワイに旅行に行ったのか。
こんなに朝早くから行ったの?
昔からやることは早いんだから。
ため息をついてソファにもたれかかった。
しんと静まり返っている。
いつも賑やかなのは
おちゃめなお母さんと
優しくて面白いパパがいたからなのかと気付く。
これから一週間、
どうなってしまうのかな。
冷蔵庫を開けると、
ほとんど何もなかった。
お母さん、買い物くらい
行ってから旅立ってよね。
これでどうやって生活するのよ。
まぁ、お金は置いて行ってくれたから
いいんだけど。
そういう問題じゃなくて、
一番問題なのは……。
トントンと、階段を降りてくる
足音が聞こえた。
肩が震えて、固まってしまう。
この足音は……。