SKETCH BOOK





目覚ましの音で目が覚めた。


大きく伸びをして、カーテンを開ける。


日の光が差し込んできて気持ちいい。


部屋着のままトントンとリビングへ向かう。


「お母さん、お腹すいたー」



扉を開けてそう呼ぶと、返事はなかった。


トイレにも寝室にもいない。


それどころかパパもいない。


会社に着ていくスーツは
クローゼットに全て揃ってある。


どうして?


一体どこに……。


「あっ」



思い出した。


ハワイに旅行に行ったのか。


こんなに朝早くから行ったの?


昔からやることは早いんだから。





ため息をついてソファにもたれかかった。


しんと静まり返っている。


いつも賑やかなのは
おちゃめなお母さんと


優しくて面白いパパがいたからなのかと気付く。


これから一週間、
どうなってしまうのかな。




冷蔵庫を開けると、
ほとんど何もなかった。


お母さん、買い物くらい
行ってから旅立ってよね。


これでどうやって生活するのよ。


まぁ、お金は置いて行ってくれたから
いいんだけど。


そういう問題じゃなくて、
一番問題なのは……。







トントンと、階段を降りてくる
足音が聞こえた。


肩が震えて、固まってしまう。


この足音は……。



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