SKETCH BOOK



「……なんだ、もう出かけたのか?」


リビングに顔を出した橙輝は
欠伸をして冷蔵庫を覗いた。


何もない冷蔵庫に、あたしと
同じような反応を見せた。


麦茶を取り出してコップに注ぐ。


それを一気に流し込んで口元を拭った。


「よし。もう少ししたら買い物に行くか」


「買い物?」


「これじゃあ何も食えないだろ。
 近くのスーパーまでそれほど遠くもないし、
 二人で行けば荷物持ちだって楽になる」


「そ、そうだけど……」



一瞬迷った。


それでも小さく頷くと、橙輝は笑った。


そうしてあたしの頭に手を乗せて撫でた。


なんだか照れてしまう。


ボサボサになった髪を手で治していると、
橙輝は言った。


「着替えて来いよ」


「あ、うん」



二階に上がって、自室にこもる。


タンスから服を引っ張り出して
鏡の前に立った。


これかな?


こっちのほうがいいかな?


たまにはスカートも試してみようかな。


迷いに迷った末、結局
いつもの格好に辿り着いた。


鏡に向かって笑顔を作って深呼吸すると、
一階に降りた。


リビングに顔を出すと
ソファに座ってテレビを見ている


橙輝の背中があった。


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