SKETCH BOOK



「おう、準備できたか」


「う、うん」


返事をすると、橙輝は
テレビを消して立ち上がった。


欠伸をすると、ボサボサの髪の毛を
ガシガシと掻く。


時間があったのなら、
少しは髪の毛整えたら良かったのに。


「橙輝、髪の毛はねてる」


「そうか?こんなもんだろ」


「ほら、ここ………」



何気なく髪の毛に触れて、気付いた。


心臓がバクバクと飛び跳ねていることに。


ぱっと手を離して俯く。


すると橙輝の声がした。


「どこ?」




ん!と言って頭を突き出す橙輝。


何も考えるな。


髪の毛を直してあげるだけ。


普通のことよ。


冷静に、冷静に……。



「こ、これ直んないよ。水につけなきゃ」


「めんどくさいからそのまま行くぞ」


「うん」



そそくさと玄関に行くと、
お気に入りのスニーカーを取り出して履いた。


かかとを潰しているために癖が出来ている。


扉を開けると、晴れやかないい日だった。


橙輝も靴を履いて、あたしの隣に立った。


うん。


普通に出来る。



大丈夫。


橙輝はお兄ちゃん。


お兄ちゃんになるんだから。



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