SKETCH BOOK



「え、百瀬?」


「えっ?」


「はっ?」


松田くんはあたしたちの関係、
どう思っているんだろう。


実は仲が良くて
遊びに来ていたっていうのは苦しすぎる。


せめて私服だったらいくらでも誤魔化せたのに。


「な、な、何で百瀬がここに?」


眉を顰めて、あたしをじっと見つめている。


目が合うのが嫌で、俯いてしまった。





「妹だよ」



橙輝が短くそう答えた。


顔を上げると、橙輝は松田くんの肩に手を置いて
真剣な表情で松田くんの隣に来た。


「い、妹?」


「おう。俺の親父と百瀬の母さんが
 再婚するんでね。だから今は一緒に住んでる」


橙輝がペラペラと話し始めた。


でもいいのかなあ?


こんなこと教えちゃったら
とんでもないことになりそうなのに。








松田くんはしばらくボーっとして
あたしを眺めていた。


そして数分経って、松田くんは笑い出した。


「な、なんだよ」


「いやー、良かったよ。兄妹か!
 そうかそうか!それなら良かった!」


え、なにこの人。


急に笑顔になった。


何を考えているのか全く分からない。


松田くんはあたしの手を取ると、
ぶんぶんと振った。


「な、なに……」


「百瀬、俺のこと分からんやろ?
 俺、松田浩平!よろしくな!」


「よ、よろしく……?」



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