SKETCH BOOK



お母さんの荷物を一緒に整理していると、
パパが二階へと上がっていくのが見えた。




それにしても橙輝のやつ、
なんであんなに機嫌悪いんだろう。


あたしが怒りたかったはずなのに、
眉間に皺を寄せて黙り込んでいるし、


松田くんと喋っている時は笑っているのに
あたしが話しかけると素っ気ないし。


あたしなんかした?


本当、気分悪い。


「梓、なんかあった?」


「えっ?」


お母さんがニヤニヤしながらあたしを見る。


その表情がどことなく怖い。


「隠してもムダよ。
 お母さんには分かるんだから」


「だ、だから何が?」


「彼でも出来た?」


「な、な、なんで?」


「当たりね、ウフフ。この一週間は
 無駄じゃなかったみたいね」



嬉しそうに話し出すお母さん。


さすが、恋愛体質。


娘の彼事情も分かってしまうなんて。


尊敬するというかなんというか……。






お土産をキャリーケースから出していくと、
お母さんは手を止めて、あたしの肩を掴んだ。


「初めてよね、梓に彼が出来るなんて。
 大事にするのよ?何かあったら
 お母さんがアドバイスしてあげるわ。



 でも……本当にいいの?」


「えっ?」





「他に好きな人、いるんじゃない?」




「ど、どうして……」


「あんた隠すの下手ね。
 どうなの?その子はもういいの?」





もういいのかって聞かれると、
まだ全然気持ちの整理は出来ていない。


橙輝があんな風に機嫌悪いから気になるし、
普通にしようにも出来ないし。


松田くんとはまだ一週間で慣れないし。


気持ちを消そうにもどうしようもないって感じ。


無意識にため息をつくと、お母さんは口を開いた。




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