海風



          想い



 いつの間にか太陽は沈みかけて、海に綺麗に映り込んでいた。



「…………」

「…………」



 長い沈黙の後、二人で示し合わせた様に口を開く。



「僕は、水乃ちゃんが好き」

「私は、凪の事なんか嫌いよ」

「それでも、僕は行かなくちゃ……」

「何でよ……」

「水乃ちゃんに迷惑かけたくないから……」

「私はそれでも構わないわ」

「そんなの、僕が嫌」

「私はむしろそれで良いって言ってるの」

「絶対に駄目」

「絶対に大丈夫よ」

「僕が僕を許せなくなっちゃう」



 何で……。
 このままじゃ凪は消えちゃうのに何で……。
 どうして頑なに私から離れようとするの……。



「それでも私は……」

「だから、言って」

「嫌、絶対に言わない」

「お願い」

「嫌だって言ってるじゃないっ!!」

「水乃ちゃん……」

「私はただ凪に……」



 どうして、何で……
 先に行っちゃうの……
 凪……お願い待って、私を置いて行かないで……
 もう一度凪が私の前から消えてしまうと言う事実に視界が霞む。



「……どうか、泣かないで」

「もっと……っ……側にっ……」

「ごめんね」

「居て欲しい……っっ……だけなのにっ!!」

「……ごめん」

「ねぇ凪、貴方の意思は……どうしても変わってくれないの?」

「勿論……変わらないよ」



「…………」

「…………」

「…………」

「…………」



「私は……ずっと前から……」

「僕はこれからもずっと……」



「凪が好きだったわ」

「水乃ちゃんが好き」



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