あなたの命、課金しますか?


スマホを手に、しばらく固まっていた。


なにか急用だろうか?それならすぐにでも掛け直さないといけないのに、なぜかそうは思えない。


どうしようか迷っていると、スマホが鳴った。


誰からか確認しなくても分かる。


「__もしもし、裕也?なにかあったの?」


「それはこっちのセリフだよ‼︎電話に出ないで何やってたんだよ⁉︎」


耳に飛び込んできたのは、激しい怒りの声だった。


「何って、お風呂に入ってて」


「それじゃ入る前にメールしてくるのが常識だろ‼︎」


「ごめん」


勢いに押されて、謝罪が口をついた。


そんな常識、聞いたことがないけど?とは言えない。


「俺は心配したんだ、なにか事故に遭ったんじゃないかって。そう考えたらもう、どうにかなりそうで」


「ごめん。これからはちゃんとメールするから」


「約束だからな?」


「うん、わかった」


とりあえず、その場はそれでおさまったけれど、気を抜くとすぐに裕也から、電話かメールがくる。


少しでも返信が遅れると、詰問してくるんだ。


【一体、何をしているんだ?】と。


過度の愛情表現なのだが、だんだんそれが窮屈に思うようになってくる。


それでも裕也の束縛は、締め付けが厳しくなるばかり。


私の首を絞めるかのように__。



< 129 / 279 >

この作品をシェア

pagetop