あなたの命、課金しますか?
「裕也、風邪?」
そう尋ねた声が、震えていなかっただろうか?
期待に胸弾んで、上ずっていなかっただろうか?
「ああ、昨日、裸で寝たら窓か開いててさ」
「ちょっと寒かったもんね。病院は?」
「帰りに行く」
「私も行くよ」
とは言ったものの結局、裕也は具合が悪いからと早退してしまった。
付き添うと言い張ったが、さすがに悪いと思ったのか1人で帰っていった。
それとも、私が従順に洗脳されているから安心したのだろうか?
残念ながら、すでに私の頭の中に裕也は居ない。早退と同時に消えて無くなった。
きれいさっぱりと。
これで心置きなく、南くんと会える。
籠の中から、果てしない空に飛び立つ鳥の気持ちが私には分かった。
それでも用心しないといけない。
誰が見ているか分からないからだ。
掲示板に書かれた【S】の文字が、心なしか大きいのは気のせいだろうか?
「裕也、早退したって?」
「うん。だから今日はゆっくりできる」
本物の笑顔が浮かんでくる。
わずかではあるが、解放された喜び。
「そっか。じゃ、俺も部活、休んじゃおっかな」
「えっ、それはダメだよー」
「いいのいいの。渚とお喋りしたいから」
「私も__南くんと一緒にいたい」
たとえそれが束の間でも。
私にとってのオアシスだから。