あなたの命、課金しますか?
「だから遅いことなんてない」
南くんに、腕を掴まれた。
彼以外の【男】に触れられることの恐怖が、震えとなってこみ上げてくる。
「俺が渚を守るから」
「__無理」
「絶対に守る」
「無理」
首を振って拒絶する。
南くんの思いを、1ミリたりと受け入れちゃいけない。
南くんはうわ言のように【守る】を繰り返すが、それは【何から?】そして【どうやって?】と、激しく責め立てたくなってくる。
何も分かっていない。
裕也という男の恐ろしさを、南くんはなにも分かってはいない。
私が甘えるのは、この理科室での時間だけ。
それ以上、少しでも気持ちを受け入れてしまうとそれは、取り返しのつかないことになる。
それが私には、嫌というほどわかる。
だから__。
「このままでいい。このまま、南くんを感じることができるなら、私はそれでいいから」
だからお願い、と、それだけを言い残して理科室を飛び出した。
ひょっとしたらもう、南くんは会ってはくれないかもしれない。
私は、南くんの気持ちを理由しているだけなんだ。
理科室から離れるにつれ、胸が痛んだ。
束の間の【夢】だったのかもしれない。
幸せな夢。
でも__。
次の日も【S】の文字が書かれていた。