あなたの命、課金しますか?
良かった。
南くんに嫌われていない。
まだ幸せな夢は続くんだ。
そう思うだけで、前向きになれた。相変わらず、裕也は熱が下がらないというのに。
いっそこのまま__なんて、とても彼女の考えることじゃないが、本気でそう思う自分がいた。
ここ数日は、周りの目を気にすることもなく伸び伸びと過ごすことができたからだ。
【自分】が有るという実感。
裕也といる私は、自分を押し殺している。気持ちに嘘はついていないが、本当の自分じゃない。
南くんといる私が、本当の、そして私が好きな私だった。
だから足取りも軽くなる。
掲示板に書かれた【S】の文字に引き寄せられるようにして、私は今日も理科室に向かう。
私が大好きな【私】になるために__。
でもいつまでだろう?
いつか夢は覚める。
いつか裕也の熱が下がるように。
再び学校に通うようになると、これまでのように足繁く理科室に行くことはできない。
それどころか、もう会えない可能性だってある。
それを考えただけで、目の前が真っ暗になるが、せめて南くんの前では笑顔でいよう。
理科室の扉に手をかけ、私は笑顔を作った。
これからの、楽しい時間を思い描きながら__。
しかし。