あなたの命、課金しますか?


「桃子っ⁉︎」


全身がずぶ濡れになった桃子は舞台上に倒れこんだ。


無様に転んだ様に、観客がドッと湧き上がる。


これも演出の一部なのか?


なにも知らない観客たちが更に盛り上げ、麻里恵たちは桃子を無視して、舞台の前にせり出て来た。


ここで曲調が一気に変わる。


高速のパラパラをロボットのように完璧に踊る、ギャルのグループ。


この速さは、とても桃子にはついていけないだろう。


収拾がつかないくらいの盛り上がりを見せる中、私は壇上に駆け上がった。


舞台袖から桃子の名を呼んだと同時に、その桃子が駆けてくる。


激しく体が震えているのは、きっと水の冷たさだけじゃない。


信じ切っていた麻里恵に裏切られ、惨めな姿を大勢に晒したからだ。


そして軽はずみに信じてしまった自分自身にも、ショックを受けている。


「桃子__?」


私が伸ばした手を振り払い、行ってしまった。


頬を流れていたのは、紛れもない涙。


後を追いかけようと思ったが、突然、目の前に現れたのは麻里恵と同じ、ギャル男。


その手にバケツを持っている。


さっと上を見上げると、ハシゴで登れるようになっており、たくさんの照明の間から桃子めがけて水をぶちまけたんだ。


「ちょっと待ちなさいよ‼︎」


きっと麻里恵の仕業だ。それなら悪事を暴いてやらなきゃ‼︎



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