あなたの命、課金しますか?


実を言うと、ここ最近、体調が悪いからとやんわり裕也を避けていた。


ウソじゃない。


吐き気がするのは事実で、始めの頃は優しく背中をさすってくれていたのだが__。


「渚、大丈夫か?」


すぐドアの向こうで、私を気遣う声がする。


これで何度目だろう?


そろそろ裕也の、怒りの導火線に火がつかないか?


生理痛だとの言い訳も、通用しなくなってくるだろう。


それからしばらく呼吸を落ち着かせてから、トイレを出る。


目の前に、裕也が待ち構えていた。


「ごめんね」と私が謝る前に、裕也が尋ねてきた。


「そんなに、俺とキスするの嫌?」


「違う‼︎」


「じゃ、なに?」


「それは__」


「ほら答えられないじゃん。それが答えだよ」


と、腕を引っ張られる。


爪が容赦なく食い込み、力の強さが怒りの強さに直結しているのが分かった。


部屋に入るなり、肩を思い切り突き飛ばされ、ベッドに倒れこむ。


「裕也、お願い__やめて」


「やめねーし。彼氏とキスできないって、なに?」


「だからそれは__」


「それはなんだよ‼︎俺が、俺がこんなにお前のこと愛してるっていうのに、お前は‼︎」


拳を振り上げた裕也が、殴りかかってくる。


咄嗟に身を縮めながら、私は叫んだ。


つい、叫んだんだ。







< 211 / 279 >

この作品をシェア

pagetop