あなたの命、課金しますか?


「えっ⁉︎」


裕也がピタリと止まった。


今にも振り下ろされようとしていた鉄槌は、力なく行き場を無くしたかと思うと、私の頭を撫で始める。


「ホントに?ホントに俺と渚の、子?」


「あ、当たり前じゃない」


「マジで⁉︎」


「__うん」


「マジかよ」


ぼう然自失といった様子の裕也だが、私を優しく愛撫する手は止まらない。


その手には、これまで1度として感じたことがない、思いやりが込められていた。


「腹、触ってもいい?」


「いいけど」


私が頷くと、恐る恐るといった風に、真っ平らなお腹に手を置いた。


あれだけ拳をのめり込ませていたお腹なのに、初めて触るみたいで__私はなぜか、自分が優位に立っていると感じた。


裕也に対し、初めてイニシアチブを握ったような。


あれだけ怖れていた男が、子供のように思えたんだ。


「俺の、赤ちゃん?」


「そう、裕也と私の」


そう言って、私は手を重ねた。


すると裕也は、体を丸め私のお腹に顔をすり寄せる。


その頭を、私はきつく抱き寄せた。


__勝った。


負けっぱなしで、これからも負け続けるしかなかった裕也との交際に、私は勝ったんだ。


「俺と渚の、愛の結晶」


「そうだよ、私と裕也の愛の証」


それを【愛】だと呼ぶのなら。




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