あなたの命、課金しますか?


それからというもの、裕也は見違えるように変わった。


なにを差し置いても私と、お腹の中の赤ちゃんを最優先にし、労(いた)わりと思いやりに溢れている。


もちろん、暴力を振るうこともない。


言葉で傷つけることもない。


会えば私を気遣い、体調を心配し、愛を囁く。


私自身、まさかこんなにも裕也が変わってしまうとは思わなかった。


この年で子供ができたなんて、ともすればそれは【障害】でしかないのに、裕也にとっては2人の愛の賜物らしい。


私を束縛し、罵声と暴威で支配しようとしていたあの頃が、うそみたいだ。


始めっから、三鷹裕也は子煩悩で優しいんじゃないか?


ちゃんと女性を敬い、慕い、全うに愛することができるんじゃないか?


「渚、一生、大事にするから」


そう言って、私【たち】を抱き締める。


安定期に入るまでは、過度に触れ合わないようにすると約束してくれた。


温もりに包まれたまま、私は幸せに浸る。


でも__いつまでだろう?


あとどれくらい、この幸せは続くだろう?


それを考えるだけで、体の芯が凍てつく。今にも震えが込み上げてきて、叫びたくなってくる。


私は、妊娠なんてしていない。


あの場を取り繕うために出た、咄嗟のウソだ。


つわりで吐き気がしたんじゃない。


理由は別にあるが、本当の理由は口が避けても言えなかった。



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