あなたの命、課金しますか?


「もっと食べろよ」


そう言って裕也は、自分の分の唐揚げを私の皿に移した。


「そんなに食べられないって」


思わず笑ってしまう。


だってすでに私のお皿には、おかずが山盛りだから。


そんな裕也の優しさが溢れた唐揚げは、一味も二味も違っていた。


「渚は、男か女かどっちがいい?」


「えっ?」


一瞬、なんのことを言っているのか分からなかった。


「だからー、俺たちの赤ちゃんのことだよ」


「あっ、そっか」


「しっかりしろよな。んで、どっちがいい?」


「私は__女の子かな?」


「女かー。女なら、嫁に行かさないし、彼氏とか連れてきたら俺、殺しちゃうだろうなー」


「えっ⁉︎」


冗談と分かっていたが、心臓がドキンと鳴った。


久しく忘れていたけれど、裕也ならやりかねない。


今は仮面を被っているだけ。


【妊娠】という鎧を身にまとった私に、迂闊に手を出せないだけだ。


仮面の下には、恐ろしい素顔が隠されている。


それをほんのいっとき、私は忘れていたんだ__。


「これ、お嬢ちゃん可愛いから俺からのサービスね」


お店のお兄さんが、そう言って餃子をテーブルに置いた。


裕也の仮面に、亀裂が入る。


お兄さんは満面の笑顔で、悪気はないんだろうが、今の私にとっては、悪意以外のなにものでもない。


けれど裕也は、にっこり笑った。


「食べろよ。2人分なんだからさ」




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