あなたの命、課金しますか?
裕也が餃子を食べている。
サービスで貰った餃子を食べている。
もし私が妊娠していなかったら、すぐに店を連れ出されて、突き飛ばされて、蹴られていただろう。
他の男の好意を受けるなんて、なんて女だ‼︎
俺という男がいながら、お前は最低の女だな‼︎
そう蔑まれ、髪を掴んで引きずり回されていたに違いない。
たとえ私のせいじゃなくても、そんなことは関係ない。
いつまで隠し通せるだろう。
それがバレた時、私はどうなるのだろう。
「なかなか美味いじゃん」
裕也の口が動いている。
油でその唇が滑(ぬめ)っている。
ぬらぬらと、ぬめっている。
いつしか私の視線は、釘付けになっていた。
目を閉じてしまいたい。すぐに、今すぐにでもきつく目を閉じてしまいたいのに、瞬きもせずにその唇に吸い寄せられる。
【南くんの指を食べた唇】に。
くちゃ。
音が聞こえる。
くちゃくちゃ。
音が聞こえる。
裕也が食べているのは餃子。裕也が食べているのは餃子。裕也が食べているのは餃子餃子餃子餃子餃子。
どれだけ言い聞かせても、ムダだった。
むしゃむしゃと指を咀嚼する、音だけが聞こえる。
その口から、指がいっぱい溢れてくる。
指が、指が、指が__。
私は、気を失った。