あなたの命、課金しますか?
頬に触れる。
涙の跡が濡れていた。
そのことも分からないくらいの、息ができない恐怖。
「そうか、渚もそんなに悲しいのか?」
そうかそうかと、訳知り顔で頷きながら裕也が私の頭を撫でる。
毛に触れられるだけで、怖くて恐ろしくて止まらない涙を、赤ちゃんを喪った悲しみだと履き違えているんだ。
じゃなかったら今頃、叩きのめされているだろう。
「渚も喜んでたもんな。やっぱり悲しいよな?」
「__うん」
頷いておく。
それで誤魔化せるなら、何度でも頷いてやる。
それで裕也を、怒らせないで済むのなら__。
「俺も悲しいよ。俺と渚の、愛の証だったからさ」
「__ごめん」
「馬鹿だな。渚が謝ることじゃないだろ?」
「うん、でも」
少し申し訳ない気が、しないでもない。
はなっからウソなんだから。
妊娠など、していないのだから。
「なにも気にすることないって。今は体を休めることを1番に考えな」
「ありがとう」
私は微笑んだ。
ようやく、微笑むことができた。
「ありがとう、裕也」と、もう一度お礼を言った。
「気にするなって」
裕也も笑顔で返してくれる。
そして微笑んだまま、私に言った。