あなたの命、課金しますか?
笑顔が消えていた。
物の見事に消え去っていた。
私の頬を両手で包み、冷たい目で見下ろされる。
「妊娠してないなら、キスできるだろ?」
「ぐっっ」
頷くことも、首を振ることもできない。
裕也はただ尋ねるだけで、私には肯定も否定もする権利はないんだ。
万力で締め付けられるように、がっちり頬を挟まれて声も出ない。
しかしゆっくり、ゆっくり唇が下りてくる。
その目をカッと見開いたまま__。
やがて唇同士が、触れた。
裕也の舌が、私の頑(かたく)なな口をこじ開ける。
生き物のように歯肉を貪(むさぼ)る舌の感触が、どうしても【指】にしか思えない。
南くんの、切断された指。
「うっ‼︎」
胃が激しく痙攣し、吐き気がこみ上げてくる。
吐くものなんてないはずなのに。
胃液だけを吐き続ける私は、力なくベッドに倒れた。
「俺と、キスしたくないのか?」
裕也の指先が、私の口から漏れた唾液をすくい取り、いやらしく光った指先を口に含んだ。
指、舌、唾。
もう私は、あの唇とキスすることはできない__。
「それじゃ、答えは1つだな」
そう言うと、私の首に手をかける。
すぐに否定できない私の首を、締めつける。
ぎりぎり。
ぎりぎり。