あなたの命、課金しますか?


「京子、はいチーズ‼︎」


私はスマホのカメラで、井沢京子の写真を撮った。


もちろん、アプリに登録するためだ。


だからといって、すぐ京子を殺すわけじゃない。さすがに私も、それはできない。そもそも京子にはなんの恨みもないんだから。


ただ、念のためにこうやってクラスメイトの写真を撮って、アプリに登録する、いわば保険のようなもの。


「渚、私も撮ってー」


ようやく私のことを「葉月さん」ではなく、下の名前で呼ぶようになった桃子がやってくる。


「えっ⁉︎」と思わず身を引いてしまった。


けれど次の瞬間、桃子の顔に悲しい影がさす。桃子がブスだから写真に撮る必要なんかないと、勘ぐったのかもしれない。


「じゃ、撮るよー‼︎」


仕方なく、シャッター音を押す。


桃子もアプリに登録する__のではなく、写真を見せてやった。


それは写真を可愛く加工する、全く別のアプリだ。


私が桃子を登録するわけがない。


だって、桃子から寿命を奪い取るわけにはいかない。


大事な親友なんだ。


私が桃子を傷つけるなんてことはない。


それ以外は、どうなっても構わないが。


それ【以外】は。



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