あなたの命、課金しますか?


「裕也、大丈夫?」


向かいに座る恋人を、私は心配する。


明らかに元気がないからだ。


それならそれで、私に降りかかる災難が少なくなるから放っておけばいい。むしろ、私にとっては喜ばしいことなのに、思わず声を掛けてしまうほど裕也は虚ろだった。


目の前のパスタを食べるでもなく、ただかき混ぜる。


心なしか顔色も悪く、痩せたようだが?


「どこか具合でも悪いの?ちゃんと食べてる?」


「ん?」と、そこで初めて気づいたようで、私が心配していることを伝えると、ようやく笑顔になった。


「俺のこと、心配してくれるんだ?」


「当たり前じゃない」


「ありがとう、渚」


ただお礼を言われただけなのに、驚いて言葉も出ない。


裕也が私にお礼を言った。


しかも、心から__。


常に私を見張り、威嚇し、力を誇示するのも集中力が必要だろう。今の裕也は完全に力を失い、ぼんやりしていることが多い。


私はまだ願い事を叶えてはいない。


裕也に消えてほしいと願ってはいるが、寿命のことがあるから迂闊に手を出せないんだ。


それなのに裕也の様子がおかしい。


アプリの影響じゃないのに、ますますおかしくなっていった。



< 232 / 279 >

この作品をシェア

pagetop