あなたの命、課金しますか?


ようやく平穏が訪れた。


三鷹裕也を【消した】ことで訪れた、平和な生活。


昨日、血走った目で私を殺そうとした裕也だったが、ちょうど両親が帰ってきたため、ナイフをしまった。


「愛してる」


そう囁いて帰っていった裕也を、私は笑顔で見送る。


だって、もう2度と会わなくてもいいんだから。


「渚、なんか元気なくない?」


桃子が教室に入ってくるなり言った。


「そう__かな?」


「うん、なんだか顔色が悪いよ?」


「ちょっと眠れなかったんだよね」


これは本当だった。


【悪魔】を消し去ったというのに、一睡もできなかったんだ。


それにはワケがある。


握りしめていたスマホを見た。


ずっと同じ画面で止まっている。


【06:54】


時刻ではない。


時間だ。私に残された、寿命。


もう7時間を切った。


願い事を叶えるために使った寿命が【20年】で、ほぼ使い果たしてしまったというわけだ。


仕方がない。


あのままじゃ、どちみち殺されていたんだから。


裕也が居ない生活を取り戻すためには、必要なこと。


あとは、どうやって寿命を増やすか?


どうやってもなにも、手段は1つしかないが。


「渚、三鷹くんが来たよ」


桃子が言っていることの意味が、しばらく分からなかった。






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