あなたの命、課金しますか?
ガソリンだ。
強い臭いが鼻を刺す。
裕也は満面の笑みを浮かべて、頭からガソリンをかぶる。
「や、やめて‼︎」
「もうこれしかないんだ、これしか」
なにかに取り憑かれたような目をし、ゆっくりとにじり寄ってくる、ガソリンをばら撒きながら。
「わ、私もアプリで綺麗になっただけなの‼︎ほ、本当はただのブスなのよ?裕也が私と付き合うことなんてない、ほ、ほ、本当にブスなんだから‼︎」
我ながら支離滅裂だとは思ったが、裕也の目を醒ます必要がある。
お互い様ではあるが、本来なら釣り合うべきじゃないと訴えるが__。
「それでも愛してるんだ、渚」
裕也が放ったガソリンが、私の制服にかかる。
【三鷹裕也が一生、私だけを愛し続ける】
私が叶えた願い事が、効いているんだ。
もう、何を言ってもムダ。
「や、やめて‼︎」
後ろに後ずさった拍子に、足元のガソリンに足を滑らせて転んだ。
裕也がポリタンクを遠くに放った。
その胸から取り出したのは、ライター。
かちり。
僅かな火が揺れる。
どれだけ小さい炎でもそれは、瞬時にすべてを焼き尽くすことができるだろう。
「お願い‼︎やめて!」
「渚、一緒に逝こう」
「やめて‼︎」